生物多様性「取り組みづくり/きっかけ体験」支援事業
生物多様性保全の取り組みを~
(詳しくは上の図をクリック)
「生物多様性基本法」ができて、全国的に 生物多様性保全の取り組み が始まりつつあります。
けれども…?
「生物多様性って、ようわからん」
「どんなことせんとあかんのかなあ?」
・・・そんな皆さん・団体さんの「?」「お悩み」-にこたえ、取り組みのきっかけづくりを応援します!
この事業では…
1) 基礎的な知識
まず「生物多様性」とその保全などについて知っていただけます。
2) 課題と取り組み
保全などの課題をみいだし、取り組みについて学んでいただけます。
3)施策・取り組みづくり
自治体の施策・各種団体等の取り組みづくりに向けた基礎的支援が受けられます。
支援させていただく対象は…
●自治体の職員や首長 ● 議会議員 ● 企業などの事業団体
●市 民 ● 自然・環境・まちづくりなどの団体・サークル・NPO
支援は講義・研修形式などで実施
- 生物多様性/その保全・生態系サービス
- 生物多様性地域戦略などの計画・戦略の例
- 自然環境=山地・丘陵・農地・水辺などフィールド観察
- 保全と利用・生態系サービスなどの考え方
- 地域戦略など施策づくりへの課題/道すじづくり
・・・・・などです。
※ 対象(主体)を複数にすることも可能です。
※内容や開催回数などについては相談いたします。
事業を行う形態
- 当協会が主催し、希望団体等を対象に、またその募集参加者も含めて実施
- 当協会と希望団体等が共催し、希望団体等を対象に、またその募集参加者も含めて実施
- 希望団体等が主催し、当協会が運営して、希望団体等やその募集参加者も含めて実施
主 催 ネイチャーおおさか 公益社団法人 大阪自然環境保全協会
大阪市北区天神橋1-9-13 ハイム天神橋202 TEL 06-6242-8720 E-mail: office@nature.or.jp
協 賛 大阪環境パートナーシップネットワーク「かけはし」
後 援 NPO 法人 大阪府民環境会議
※ご相談により、ケースによっては、当協会が自主予算を拠出して実施する場合もあります。
毎日フォーラム 日本の選択 2014年1月号に掲載されました
毎日新聞社『毎日フォーラム日本の選択2014年1月号』より許可を得て転載させていただきました。PDFにリンクしています。以下、全文です。
大阪自然環境保全協会からの発信
生物多様性「取り組みづくり・きっかけ体験支援」を展開!
冒頭からネガティブだが、明白ながら地球という閉鎖系の環境には限界がある。人間はわずか200年で化石資源を費やし、地球温暖化をまねいて“窒息状態”だ。そして生物多様性の危機を加え、三重苦に喘いでいる。しかし、私たち自然保護団体の主要ミッションである生物多様性の保護保全は、なかなか、国民的、人類的な使命とはならない。生物多様性条約ができた1992年から、やっと16年後の08年に生物多様性基本法が施行された。ところが、既に5年半後の今、取り組みが進んでいるとは言い難い。
「地域戦略」策定自治体はわずか51/1789
同法で自治体に策定の努力義務がある「生物多様性地域戦略」の策定済み・策定中自治体は、全国1789のうち93しかない。策定済みは51、内訳は23都道県、11政令指定都市、11市3区3町(環境省、13年3月末調べ)。ちなみに大阪府では、府は未策定、43市町村のうち策定は堺と和泉の2市だけである。
当協会では、その43市町村を対象に生物多様性保全の取り組みアンケート調査を実施・回収中だ。「課題」や「困っていること」の回答には、「担当部署がない。内容が十分把握できていない」「主体となる部署がなく…」「担当部署未連携」―といった組織的な課題が目立つ。また、「専門職不足」「人員と予算の確保が困難」など人材、原資の問題のほか、「自然環境や生物の把握を行っていないため」という基礎情報不足も挙げられている。
「取り組みづくり・きっかけ体験支援」事業を実施
悩ましい状況のなか、当協会では遅ればせながら、地域戦略の策定や保全の取り組みを自治体、企業・事業団体、市民に普及していく生物多様性「取り組みづくり・きっかけ体験支援」事業(協賛:大阪環境パートナーシップネットワーク「かけはし」)を始めている。アンケート回答のように、理解しづらく、どう取り組むべきか見通しにくい「生物多様性」「保全」について、当協会が希望者を募り応援していく活動である。概要は以下の通り。要は、「生物多様性って ようわからん」「どんなこと せんとあかんのかなあ」……そんな団体さん皆さんの「?」「悩み」に応え、少しでも取り組みが進めば、という運動である。
【この支援の目的は…】
①<基礎的な知識>まず「生物多様性」とその保全などについて知っていただく
②<課題と取り組み>保全などの課題を見出し、取り組みについて学んでいただく
③<施策・取り組みづくり>自治体の施策・各種団体等の取り組みづくりに向けた基礎的支援が受けられる
【支援の対象は…(※対象・主体が複数も可)】
自治体の職員や首長/議会議員/企業・事業団体/市民/自然・環境・まちづくりなどの団体・サークル・NPO
【支援は講義・研修・ワークショップ形式・調査などで実施<以下は選択メニュー>】
◇生物多様性/(自然)生態系/保全・生態系サービス活用
・生物多様性とは/「生物多様性」をめぐる状況/生物多様性の危機
・保全の施策・生態系サービスの活用/地域戦略などの計画
◇関係法制度/基本法と地域戦略などの計画/戦略などの例
・関係法制度/自然・公園関係の計画/農業施策
・基本法/地域戦略・計画・取り組みなどの例
◇地域の自然環境・生物多様性<山地・丘陵><農地・水辺・市街地>など
・対象地域における主な自然環境の概容理解、把握
・自然環境フィールドの視察調査/自然環境基礎調査/生態系サービスの抽出
◇具体的な保全と生態系サービスの活用などの考え方
・保護保全の取り組み、生態系サービス活用の手法、地域的産業などへの利用
・生物多様性の危機についての課題化/生態系サービスについての活用化
◇地域戦略など政策施策づくりへの課題/道すじづくり
・課題整理/地域戦略など政策施策の指針づくりや骨子づくり ほか
地域の 地域資源による 地域・環境づくりのための保全
上記事業を進める理由の一つは、現在の法制度のままでは、「生物多様性の危機」(生物多様性国家戦略)は進むばかりだからだ。国土や自然環境に関する法制度は、国土利用計画法など開発・利用を主目的とした体系であり、保護保全の法制度は従属的である。これを根本的に見直すべきはずだが、私たちはまだまだ無力だ。基本法の規定も努力義務の色が濃いため、あらゆる主体が不断の努力を積まなければ、ようやく謳った法の理念も具現化できない。この運動は、保護保全を法制度のみに任せにくい現実のなか、一つ一つ実効を上げようとする試みである。
二つめは、アンケート回答のように、自治体に態勢・情報・人材・原資が乏しいなか、総合的・計画的な地域戦略を一気に策定することは現実的でないからだ。このため、まさにそれにつながる第一歩のきっかけづくりに協力させていただき、その後の戦略づくりや保全施策へと拡充させてゆきたい。ささやかながら、そのための「仕掛けのモデル」、生物多様性保全の主流化への<最初のワンステップ運動>ともいえる。
もう一つは、当協会の運動経験を活かして、地域が固有の財産である生物多様性資源を見つめ直し、それらに根ざして、地域が主体的に保全するという意識を拡充させたいからだ。当協会は、市民参加型自然調査の先駆け「タンポポ調査」「里山一斉調査」を70年代から、また80年代からは「里山保全運動」を全国で初めて手掛け、それらの拡充・普及、人材育成に努めてきた。こうした運動は[地域] [市民] [持続]を基軸に展開しており、今回の運動は、そうした協会の特性、いわば社会的資源を活かそうとするものでもある。
生物多様性条約が生まれてから、もう21年。しかし、私たち自身がその中に在る「生物多様性」は、まだまだごく一部にしか浸透していない。それでも、いま、ここから、普及し、主流化させることから…しか、踏み出さざるをえない。
私たちは、刻一刻と、生物多様性へのダメージを深めている。しかし、多様な市民たちや主体による保護保全が、地域の資源・財産を守るとともに、それらを活かし、地域を再創造しつづけるパラダイムに発展していくよう期待したい。
【生物多様性】
生物多様性条約では「すべての生物の間に違いがあること」と定義され、私たち人間もそれらの個性とつながりのなかにあり、地球という生態系に生かされている。しかし、その危機は地球的規模で深刻化しており、環境省では取り組みを推進するため、10年より自治体などを対象とした「地域生物多様性保全活動支援事業」を実施している。また、生物多様性地域戦略策定のための手引きも作成している。
岡 秀郎(おか・ひでお)
1956年大阪市生まれ。大学卒業後から97年まで毎日新聞記者。京都などの支局、社会部(大阪)に勤務。環境分野では、黒部峡谷電源開発計画やゴルフ場建設の白紙化キャンペーン報道、ワシントン条約締約国会議、地球サミットなどを取材。98年からは大阪自然環境保全協会(公益社団法人:市民団体)の事務局長、02年より理事。他の環境団体の理事や評議員なども歴任。共同執筆に「総合的な学習の時間 自然環境学習の手引き」、「自然保護トラストマニュアル」など、著書に「立山からチベットへ」。