第11期第9回講座 自然のしくみ ③ 

HOME » 講座・講習会 » 自然環境市民大学 » 第11期第9回講座 自然のしくみ ③ 

第9回講座 自然のしくみ ③  (2013.6.12.)

講座内容 奈良公園の樹木とサクセッション
講師 佐藤 治雄(大阪府立大学名誉教授/自然環境市民大学代表講師)
場所 奈良公園(飛火野、ナギ林など)

公園の入り口で「きょうの講義は多岐にわたります。樹木で皆さんが知らない木や、あやふやな木をよく観察して憶えて帰ってください」との説明が講師の佐藤先生よりあった 

シラカシに付着しているノキシノブ(シダ植物)を観察しながらニッチ(生物が生きていける環境)の説明があった。他の生物に着いて生活している生き物は寄生、半寄生、着生とあり、ノキシノブは着生で樹幹流を利用し生きている 

奈良公園には1,200頭ほどのシカが生息しているが、シカ(草食動物)と芝との関係に触れ「コモンの悲劇」の説明が有った。また、常にシカに食べられる植物はストレスがかかり、大きくならない。公園内にある樹木の下枝の高さが地上から約180cm程度でそろっているが、シカが立ち上がって食べられる高さでこれをディアラインと呼ぶ 


<サイカチの葉の拡大>      
 サイカチの樹の下に集合し、佐藤先生より、「1枚の葉と思われる葉っぱを取ってみてください」とのクイズが出された。答えはサイカチには1回羽状複葉や2回羽状複葉や、時には写真のような葉もあるというのが答え。この木にはとげが有り幹の中心部は枯れていた。実にはサポニンと言う成分が含まれていて石鹸の代用になる


<幹の空洞の拡大>
ムクロジの幹の中は空洞になっていることを受講生は体感。佐藤先生の写真を見せて
もらい中空の状態を確認

飛火野で植樹した木をシカから守るために作られた2か所の柵を観察する。この様な小さな環境でも自然のままに置いておくと、樹木の生え変わりが起こりサクセッションを観察できる

クスノキの巨樹を観察。この木は先ほどのサイカチと違い樹木の中心部がむき出しとなり、人が通れるほどの穴が有る。通り抜けにチャレンジしている受講生もいた。木の中心は死んでいても樹皮に近いところで生きていることが分かる。又葉も茂って光合成は行われている。教室で講義を受けた事を復習する機会になった

シカが食べない植物がはっきり確認できた(シダ、アセビ、ナンキンハゼ、イヌガシ、ナギ) 

禰宜道に出ると急に明るくなった場所があった。これは台風で樹が倒された所で、これをギャップと言う。光が当たるようになり地中で発芽のチャンスを待っていた種子(埋土種子)が芽生え、新しい生命を生み出し樹種が変わっていくいわゆるサクセッションが進行している

1998年台風7号で根ごと倒れた木。このような攪乱が起こりギャップが生じる事は自然が再生されていく上で必要な事である 

巨大なイチイガシと春日神社境内の国指定天然記念物ナギ林。ナギの原生地は不明だが、神が下りてくる依代とされ、献木されたものから広まったと言われている。ナギはシカが食べないうえ、剥がれた樹皮から他の物を阻害する成分を出すため有利に繁殖したと考えられる 

今日は前2回講座で学んだ事(ニッチ、サクセッション、ギャップ、樹林の構造など)を実地で確認できる良い機会で充実した1日だったと受講生の振り返りがあった

 

ネイチャーおおさか 公益社団法人 大阪自然環境保全協会

ネイチャーおおさかは、身近な自然を愛し、これを守り育てたいと願う市民が運営している公益社団法人の自然保護団体です。お電話でのお問い合わせはこちら 06-6242-8720

  • お問い合わせ


  • Facebookページ
  • 野山のたより
  • 都市と自然