2010年度 通常総会報告
総会で事業計画・予算案など6議案を承認
協会設立時からの理事、佐藤治雄・副会長が退任
新任理事には岡和田、道下、安富の3氏
保全協会は2010年度の通常総会を5月22日に大阪市北区のエル・おおさかで開き、6議案をそれぞれ賛成多数で承認しました。
今回は役員改選期にあたり、協会設立時から34年間理事を務めた佐藤治雄・副会長が退任。役員選挙では信任投票の結果、理事17名、監事2名を選任し、理事では岡和田齊(ひとし)、道下雄大(ゆうだい)、安富俊晴の3氏が新任となりました。また、公益社団法人化に向けた取り組みでは、来年度の通常総会で正式に新定款に変更することを確認しました。
議案は、①09年度事業報告書 ②09年度収支計算書 ③10年度事業計画書 ④10年度収支予算書 ⑤公益社団法人化に向けた定款変更素案の報告 ⑥役員選任。出席は、正会員296名のうち会場26名、委任など166名の計292名、協力会員1名。議長は小路公之氏(太子町葉室里山クラブ事務局長)が務めました。新しい取り組みを中心に事業計画の概要などを紹介します。
なお、2009年度収支計算書、2010年度収支予算書の概要などについては、下のリンクをクリックしてごらんください。
収支計算書 収支予算書
正味財産増減計算書 貸借対照表 財産目録
■自然保護事業
○新規としては、能勢・長谷の里山林(私有)でモデル林づくりに取り組みます。また「里山指標生物調査」も実施し、里山関連グループに協力を呼びかけて里山の自然の指標となる生物リストの作成をスタートさせます。さらに、シカによる採食圧に対応して高槻市「本山寺・神峯山寺の森林保全」に取り組みます。
また、昨年度は申請1件が不採択となった特定自然保護活動支援金(協会内のグループ等に対する活動支援のための支援金・A:最高200万円、B:同20万円)を募集し、7件(A4件、B3件)の応募があり、審査の結果A2件、B2件を採択しました。
○里山保全では、講義スタイルの研修「里山ステップアップ講座」を開催する予定です。
○フィールドの里山保全の主催活動(団体)は、太子町葉室里山クラブ、太子人工林間伐隊、妙見里山倶楽部、野崎・飯盛の山と緑を保全する会、紫金山みどりの会、穂谷里山保全の6か所。提携団体は、五月山グリーンエコー、富田林の自然を守る会、八尾神立里山保全プロジェクト、生駒いいもり里山サポーターズ。
○野生シカ調査(野生シカ調査会)は第2期シカ保護管理計画4年目となり、今期も地域個体群の調査、生息域、他地域との回廊の確保、農林業被害などの調査を通じて健全な生息のバランスを考察します。
○主な開発問題への取り組みとしては、水と緑の健康都市開発・余野川ダムのほか、安威川ダム、槙尾川ダム、国際文化公園都市開発など、近畿圏の無駄な事業中止への運動を継続します。
○タンポポ調査は、大阪では今回で8回目となり、今回はタンポポ調査・西日本2010実行委員会の事務局として、西日本19府県で在来10種・外来2種・雑種の分布状況を明らかにし、それらを指標として西日本の環境の現状を把握します。
○公園のあり方の調査・研究としては、2001年に大阪府公園課と保全協会が公表した「大阪府生きものとふれあえる都市公園計画策定委託報告書」の内容の実現と生物多様性保全の観点から公園のあり方について調査・研究し提言します。当面は錦織公園自然調査研究会の活動を中心に進めます。
○「ネイチャーおおさか・スタディファイル」のNO.4を発刊します。
■自然保護の普及(観察会・講座等事業)
○新規には、各観察会の相互連携や情報共有を目的とした「観察会連絡会」を開催し、継続的・全体的な活動について協議します。
○各主催講座スタッフおよび各修了生の会スタッフの相互連携や情報共有を目的とした「主催講座連携検討会議」は引き続き隔月で開催します。
○また、主催講座の修了者やすでに活動しているボランティアリーダー、また主催講座運営スタッフや指導者を養成する立場にあるスタッフ等のスキルアップのための講習会を企画し、普及事業の活性化につなげることをめざします。
○主催のボランティア養成講座は下記の通り5件、第35期ナチュラリスト入門講座、第20回自然観察インストラクター養成講座、第17回自然かんさつ塾、第8期自然環境市民大学を継続します。
○自然観察会・行事は、主催団体が下記の15グループとなっています。百樹会、堺自然観察会、吹田自然観察会、服部緑地自然を楽しむ会、えぼしがた公園自然観察会、グリーンレンジャー観察会、枚岡ネイチャークラブ、淀川自然観察会、海の観察会、みんなでかんさつ隊、枚方しぜんハイキング、おもしろ自然たんけん隊、海がめ観察会、大和川自然観察会、泉北自然を楽しむ会
○エコツアーも継続します。
■講師・スタッフ派遣・調査研究(外部から依頼される公益事業)
○下記の通り、行政やその関係機関、民間団体などから依頼される事業に講師・スタッフを派遣します。
行政や行政関係機関、民間事業団体等が主催する自然環境保全に関する講座や講演、自然観察・体験の指導などの普及行事/および里山保全やその指導者養成に関する講座や技術的な指導など/自然環境の調査・研究、保全計画作成、それらに関する指導など/ビオトープ整備や植栽、緑化、それらに関する指導など/エコツアーなど
○その他の公益事業では、調査・研究・保全計画作成を中心とした依頼公益事業を推進し、自然環境資源の基礎調査、里山里地など地域自然環境の保全計画策定、市街地における緑地保全計画の策定などを実施します。また、学校や公共施設などにおけるビオトープ整備や緑化の支援を継続します。
■機関誌発行・ホームページの維持更新
○機関誌(後注・会報誌)「都市と自然」(B5判)を継続して毎月発行し、適宜、企画、コーナーを刷新します。保全協会が近畿における自然保護運動のセンターであるという位置づけのもと、前年度より継続して「特集」や「報告」において、より広範な内容の掲載をめざします。表紙写真は新しく「里山の生きものたち」として、固定した撮影者によるシリーズを始めます。現行の20ページだてを維持します。
○ホームページについては、協会の広報メディアとして、HP各ページの構造・外見・内容の改善・充実を継続します。パソコン利用技術の学習会等でHP技術をそなえた人材の参加を呼びかけ、HP委員会の充実をはかります。
■事務局機能の充実・IT化の推進
近畿における自然保護運動のセンターとして、また将来の公益社団法人にふさわしい事務局づくりのため、業務の見える化・改善・効率化を図ります。このために必要な機器やソフトウェアなどの導入更新を行います。特にメールシステムを抜本的に改善し、メールのワンデーレスポンスをめざします。
■公益法人改革への対応
(1)定款変更の方針
公益社団法人化に向けては定款を変更する必要があるため、2011年度における定款変更を目ざす前段階として、今年度は第5号議案により、理事会で作成した定款変更素案を報告しました。
(2)財務的条件の整備
1)公益社団法人化に向けては、使途不特定財産を一定額に抑制することなど財務的条件も整える必要があり、保全協会の使途不特定財産である「繰越収支差額」の一定額を「特定資産」として設定して国債の購入に充て、財務諸表に明記します。この「特定資産」はその利回りを公益目的事業に充てます。
2)公益社団法人化に必要となる公益目的事業(費)比率50%以上の条件を満たすため、ボランティアの無償役務を「見なし公益目的事業費用」(実体として発生するものでなく支払いも伴わない費用額)として計算していきます。
(3)専門家への助言の依頼
公益社団法人化に向けては財務経理などに関する専門的知識・技能が必要なことから、一定部分について助言を依頼します。
■役員の改選
今回の改選を機に、副会長だった佐藤理事のほか、白石卓也、新保満子、中島敏明、米道綱夫の4理事も退任しました。
総会後には各氏がそれぞれ挨拶し、佐藤氏には花束が贈られ、会場からは温かな拍手に包まれました(下の写真)。
また総会を中断して開いた理事会では会長に高田直俊、副会長に金谷薫をそれぞれ再任し、総会に報告しました。 そのほかの改選された理事・監事は次の通りです。
【他の理事】上田宏/岡秀郎/岡和田齊/木村進/栗谷至/杉本博/高畠耕一郎/田中広樹/田渕武夫/飛田太一郎/夏原由博/野田奏栄/早川篤/道下雄大/安富俊晴【監事】新居誠一郎/岩井義清
■●【出席者の発言・質問・答弁】(一部)
会場からは、大阪府会議員でもある会員が、水と緑の健康都市の第2・第3区域の開発や余野川ダム事業、安威川ダム、槙尾川ダムの状況をはじめ、国際文化公園都市「彩都」中部地区の開発動向、第二名神・高槻-神戸北間の建設について報告し、「(第二名神など北摂丘陵関係の開発・建設は)大切な局面に来ており、保全協会とともにがんばっていきたい」と述べました。
また、事業計画案で、使途が不特定の財産で国債を購入して利回りを公益目的事業(自然保護事業)に充てる計画については、国債による資金が公共事業にも使われているため保全協会にはふさわしくない資産運用ではないかという質問がありました。これに対して理事・監事は、公益社団法人化に向けては使途が不特定の財産を一定額に抑制することなど財務的条件も整える必要があるため緊急避難的な処理であり、運用の見直しもあることや、国債で調達した資金がすべて自然保護に反する事業に充てられているわけではないため必ずしも不適切とは言えないのではないか、と答弁しました。
さらに、公益社団法人化に向けた定款変更素案の「目的」の条文については、現行定款に記述されている「郷土の自然環境の保全…」などの文言が無くなっているため落とすべきではないという意見がありました。これに対して理事会側は、今回の素案は周知のために報告したものであり、正式な定款案を作成して来年の総会に諮るまでに、素案に対する具体意見を提出してもらえるよう答弁しました。
以上