余野川ダムに対する高田会長の意見


淀川水系流域委員会猪名川部会(2002年1月27日開催)・意見聴取に対する意見発表の内容(まとめ)

高田直俊

(社団法人大阪自然環境保全協会理事、大阪市立大学大学院工学研究科土木工学専攻)



    ◆最近のダム計画をみると、どれも基本計画高水量が大きすぎるように思います。
    ◆そういう意識で、余野川ダムを見ていましたので、12月3日付けで7グループ名で提出しました、余野川ダム計画を批判する意見では、比流量を極端だな、と思いつつも誤読してダムに対する意見を書いたため、間違った意見でご迷惑をお掛けしました。 あの部分は削除します。訂正の機会が与えられて幸いです。
    ◆しかし、改めてダム計画をみますと、やはり基本計画高水量は大きすぎるように思います。
    • 主な洪水は、昭和28年、35年、42年、47年、58年、平成元年、11年などと記録されています。
    • 余野川合流点の猪名川の基本計画高水量は、毎秒3500トンです。(第7回猪名川部会説明資料によると)既往最大洪水は昭和35年の毎秒約2300トンで、毎秒3500トンというのは既往最大洪水の1.52倍です。
    • また、余野川合流点の猪名川の疎通能力毎秒1000トンは、この基本高水から確率1/4とされています。これは4年間隔の出水になりますが、毎秒1000トン以上の出水間隔はもう少し長いと言えます。
    • 余野川ダムへの導水路計画地点の基本計画高水量は毎秒260トンと算出されていますが、この付近の疎通能力は、川幅、川の深さ、河床の粗さ、川の曲がり方から見て毎秒260トンはないと思います。この計画流量では導水路流入地点上流部の河川の拡幅が必要になってしまいます。
    • 余野川沿川は余り昔とは変わっていませんし、田畑は維持され、かつてよりも森林は生長して、流出量の低下もある程度見込めるはずです。また山裾で保水性の良い森林化した放棄田畑も多く見られます。
    • また猪名川上流部の市街化は進みましたが、昭和59年に一庫ダムができています。
    ◆これらの洪水による浸水被害が記録されていますが、堤防を水が越えるよりも低平地の内水氾濫が多かったのではないでしょうか。(第7回説明資料によりますと)昭和28年の毎秒1650トン洪水の1.5倍に対する、現状の河川整備状態での推定浸水箇所は、ほぼこれに相当する流量の昭和35年毎秒2300トンによる実績浸水箇所よりもずっと広範囲になっているのも不思議です。
    ◆昭和45年頃から河川整備が大規模に進められてきており、またかつての浸水原因である多田地域の塩川合流点付近と余野川合流点上下流の疎通力向上工事が進んでいます。護岸や橋梁基礎工事は、昭和40年以前のものとは異なり、しっかりしたものが造られています。それ以前は今のような日常的に自由に使える建設機械、例えばバックホーが有りませんでした。ほとんどが人力掘削でしたから、根入れが深く流水に強いものは作れませんでした。技術、資材、経済力も劣っていました。
    ◆幅広い川では、水深が少し大きくなると流量はそれに比例以上に増えます。私は猪名川と藻川に鳥を見によく行きますが、猪名川を見ますとかなり背の高い中州が目に付きます。これらを除去すれば流下能力や河道貯留量はかなり増えるはずですが、自然環境の立場からは、川の自然を維持するために、このような普段流れに曝されない乾いた陸域を出水で冠水するようにすることがむしろ必要です。
    ◆猪名川の治水に対しては現行の改修計画を進めていただくのがいいと思います。各地で調整池が根拠不明のまま廃止されていますが、猪名川ではこれを重視しているなど総合治水の考え方が実現しています。
    ◆余野川ダムは川を直接せき止めるものでないので、堆砂の問題は避けられる点で、今後のダムのあり方の見本になる計画だと思いますが、出水時に浮遊流下する落葉落枝などが流入し、常時のきれいな水があまり入らないので、水質がどうなるかの検討も必要と思います。ダム湖の上流域には田畑があり、また隣接して「水と緑の健康都市」造成地がおそらくそのままの形でしばらく残り濁水源になる恐れがあります。
    ◆余野川自体は猪名川合流点まで掘り込み型の河川で、自身の洪水氾濫にはダムは要らないはずですが、余野川下流部の基本計画高水量は毎秒400トンを越えますので、この流量に対しては建前上ダムが必要、ということになってしまいます。余野川の流量は大きくないので、猪名川本川に対するこのダムの治水効果はあまり高くありません。高価で環境へのインパクトの大きいダムの必要性に関して、財政を含む色々な角度からの深い議論を期待します。
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