私たちの夢洲生きもの調査とは

---私たちの夢洲生きもの調査とは---

夢洲は、隣の南港野鳥園とともに大阪府の生物多様性ホットスポットのAランク16か所の中の一つ。大阪市内には、淀川とこの場所だけしかありません。
ここに、万博とIRカジノが作られると知ったとき、この生物多様性豊かな場所はどうなるのか、大変気になり、私たちは自然環境保全の要望書を出しました。そして、まだ公開されていない夢洲が、実際はどんな場所であるのか知りたいと思いました。
2019年1月理事会で下見をし、2019年6月より、NPO地域づくり工房と共に地球環境基金の助成をいただき、夢洲の自然を考えるワークショップ「市民からのアセスメント提案」と、その根拠となる生きもの調査をすることにいたしました。

このページは、夢洲の全体像と、私たちの調査を紹介するページです。

夢洲とは・・・

夢洲(ゆめしま)ってどこにあるの?

夢洲は、大阪湾の北端近く、陸地が大変間近にある人工島です。大阪湾東側は市街地が広がっています。海と都市を隔てる自然環境として、北から、尼崎21世紀の森、矢倉干潟、舞洲(まいしま:スポーツ施設やゴミ焼却場があります)、そして、夢洲(ゆめしま)、南港野鳥園がある咲洲(さきしま)、「共生の森」がある堺第7-3区、と帯状に並んでいます。矢倉海岸以外は埋め立て地ではありますが、大阪平野と大阪湾の気候にとって、大阪湾を生活の場とする生きものにとって、夢洲が自然環境として存在することは、とても貴重だと言えます。


夢洲は埋め立て地
夢洲は大阪市によって、40年ほど前に造成され、ゴミ埋め立て地として活用されてきました。
先に埋め立てられた場所(夢洲4区)には、コンテナターミナルが作られ、関西の物流を支えています。2区3区には建設残土や浚渫土、産業廃棄物などが持ち込まれています。1区には焼却灰が埋められ、先に埋め立てが済んだ場所にはソーラーパネルが並び、建設当時は西日本でいちばんの規模となった太陽光発電所「ひかりの森」があります。

夢洲の区画の図
(1区・2区・3区・4区)

夢洲の航空写真2018年10月撮影(大阪港湾局提供)私たちが初めて訪れた頃の地形です。

夢洲に行くには?

夢洲への交通路は、北の舞洲との「夢舞大橋」(片側2車線の自動車専用道路。
南の咲洲(さきしま)とは、夢咲(ゆめさき)トンネルという片側2車線の自動車道路でつながっています。路線バスはありますが、現在、徒歩や自転車では渡れません。2021年秋現在、地下鉄の延伸工事が行われています。夢洲内には、コンビニが一店あります。

夢舞大橋写真

1区に広がる「大阪ひかりの森(太陽光発電)」

各エリア(区)はどんなところ?4区は巨大なコンテナターミナルです。平日の道路は普通乗用車が埋もれるほどのコンテナ車の車列です。(写真)入場制限エリア(1,2,3区)とコンテナヤード(4区)の間を南北に通る公道風景です。

1,2,3区へ入るには特別な許可が必要です。許可証がないとゲートから入れません。またこのエリアは現在まだ海上扱いのため、車両は船舶扱いで右側通行になっています。

(写真)入場ゲートを入るとすぐ、この「場内右側通行」の大きな看板が目に飛び込んできます。

1区は現在「大阪広域環境施設組合」の管轄下で、大阪の焼却灰が持ち込まれています。すでに埋め立てられたところには、太陽光発電パネルが並ぶ「大阪ひかりの森」となっています。ここに入るのは別の許可をもらい、事業組合職員同行でないと入れません。貴重な水草も生息していますが、調査には年に数回しか入れませんでした。(写真)大阪市環境局から事業移管される前(2019年ごろまで)は、1区の入り口に必ず管理者がいました。

夢洲は、このような場所で、夢洲内部も開発工事により、刻々と姿を変えています。
工事の進捗にしたがって、調査に入ることが許される場所も変わりました。

私たちの調査とは

調査は、おおむね月2,3回。毎回およそ2~4時間かけ、許可されているルートを車で走行しながら、生きものがよく見えるポイントで車を止め観察する、というスタイルです。
毎回の調査では主に野鳥観察、そして、ルート上で花や昆虫を見かけたら写真に撮って記録する、というスタイルをとりました。
ここでは調査ルートと、どのような場所であるか、紹介します。
※ベースとなる地図は【R02年度】大阪市地形図を使用して作成しました。

おおむね2020年11月までの走行ルート
工事は平日は土砂投入のトラックが行きかいますが、まだ私たちの調査も平日でも入場許可されていました。
購入土砂を第3区に

2020年12月より2021年5月までの走行ルート

2区北半分の砂礫地に、コアジサシ繁殖保護エリアを設定してもらいました。しかし、1区との間の道や3区のコアジサシ繁殖ほぼエリア以外の場所で工事が進んでいるため、走行ルートは限定され、コアジサシの様子を見に行くために毎回ルートが変わる状態になりました。

この走行ルートは、この期間ほぼ典型的なもので、コアジサシ保護のために特別な許可をいただいて走行しているルートです。


2021年6月より現在
3区にすでに埋められた土砂を2区埋め立てに利用するために、工事が加速しています。3区には全く入れなくなり、2区の周りをまわるだけの調査になりました。


各ポイントはどのようなところか

ポイント1・ポイント2(1区との間の細い道)
現在は入ることができなくなっていますが、細い尾根道より北北東方向を望むと、広大な雨水池の向こうに舞洲のゴミ焼却場や夢舞大橋がみえます。ここはIR用地として早くに土地造成が終わっていましたが、現在、ここに入れた土砂を再び掘り起こして、2区万博予定地のほうへ移動し、2区湿地の埋め立てに利用しています。
2019年1月に訪れたとき、ここに5000羽を超えるホシハジロやハシビロガモがゆったり浮かんでいました。その後購入土砂を入れて砂礫地になると、2020年5月、ポイント1より北側には500羽を超えるコアジサシがやってきて繁殖行動を始めるも工事続行でいなくなりましたが、その後6月の長雨で再び雨水池ができると、水鳥たちが戻ってきました。
2020年冬、北側から埋め立てられ、ポイント1より南側だけとなった池に、ホシハジロが密集していました。
2021年春には、ポイント2より東を望むエリアにコアジサシ繁殖保護エリアを作ってもらいましたが、やはり大雨で水没。その後コアジサシは2区へ移動したので、ここは土砂掘り返しの工事が行われ、2021年秋立ち入り禁止区域になっているため、現在状況はわかりません。
※2020年12月から2021年5月、3区の保護エリアの外は工事をしていたため、コアジサシ観察のための特別許可をもらって、保護エリアに入っていました。(「2’」を通る2番目の観察ルートです。)
写真左)2019年11月雨水池だったころ  写真右)2021年5月コアジサシ繁殖保護エリア(地面の緑色は防鳥対策の塗料)
 
ポイント3(2区)
ここは調査開始時にはちょうど湿地を埋め立て始めていました。しかし雨が降ると湿地にもどり、たくさんのハマシギが歩き回っているような場所でした。その後埋め立てが続き、2021年5月には埋め立て後の水抜きのためのプラスチックドレーンが地面に露出していたところに、多数のコアジサシが繁殖行動していたため、急遽保護エリアにしていただいた、という、変化の多い場所です。
 
ポイント4(1区の池)
夢洲内の水を浄化する最後の池で、環境に変化はありませんが、他のエリアの水面が少ないときや、西風のきつい時には多数のカルガモが休んでいることがあります。
 
ポイント5(海上保安庁レーダー塔付近の築堤上から池を望む)
比較的小さな面積の池で、野鳥がいたりいなかったり。土地造成の変化はありませんが、水位が低下するとナルトサワギクが岸辺を覆うようにはびこり、潮をかぶるとそれが枯れて、ウラギクが出現したりと変化します。ギンヤンマやトノサマバッタがわいてくるように思えるほど多い場所。
                                                                                
ポイント6(夢洲南岸沿いの築堤上から、北側の2区の広大な池を望む)
2区の広大な池。左は広角レンズ、右は望遠レンズで撮影しています。
対岸の埋め立ては、2020年12月から急ピッチで進んできました。広いし距離があるので、かなりの望遠レンズでないと、小さな野鳥の種類も特定できずカウントもままなりません。冬には100羽ほどのツクシガモがやってきますが、ツクシガモは大きいのでよく目立ちます。
 
ポイント7(南岸築堤上より北の池に続く湿地やヨシ原をみる)
工事での土地の変化はないものの、雨などによる水位の変化で毎回様子が変化している場所です。ヨシ原と塩性湿地が入り組んでいて、ここでセイタカシギやカルガモの繁殖が見られました。写真は左は2020年11月、右は2021年7月、ほぼ同じ場所を角度を変えて写したものです。ヨシがどんどん進出しているのがよくわかります。
 
ポイント8(ヨシ原の中に隠れるようにして存在する池)
以前は周りに木も生えていて、隠れるようにして存在していましたが、今はヨシ原の中に湿地の続きのようになっています。カモやチドリが上空を舞う猛禽類から隠れるようにしていたり、ここではヌートリアを頻繁に見かけます。ヨシ原をすみかとする小鳥たちや、渡りの前のツバメの大群などがみられるのは、この広大なヨシ原あってこそでしょう。
 
ポイント9(2区埋め立ての最前線?)
ここは南側からはよく見えない2区の池の様子が観察できます。この場所からは塩性湿地の中州がよく見え、そこでセイタカシギの交尾や営巣を確認することができました。またたくさんのコアジサシの幼鳥や、渡りの前の集結と思われるコアジサシの集団を確認できたのもここからでした。
これより南側は万博計画で水辺になるのでしょうか?しかし、ヨシ原は埋め立てられる計画だと聞いています。
 
ポイント10(幹線道路より)
3区への入場ができなくなったので、3区にかろうじて残る池を幹線道路より眺めると、50mプール2つ分くらいの水面がみえる。そこにもサギやカルガモがいつもたたずんでいる。2021年1月、かつては広い池に5000羽も滞在することがあったホシハジロは2000羽で「密」になっていました。
(追加)夢洲1区の塩性湿地風景
夢洲1区は、焼却灰埋め立て地で、環境事業管理下のため、特別の入場許可が必要で、平日しか許可が下りません。そのため、私たちも数回しか調査に入っていませんが、このエリアの北西側の池から、協会の調査で希少な水草が発見されました。その後自然史博物館の調査によって確認されています。
 
(追加)入場した直後の幹線道路から風景
左の写真は2019年7月。右の写真は2021年8月の同じ場所。土地造成ですでにこの草原は失われましたが、仮置きしているらしい土砂の山の上にチョウゲンボウの家族がいました。
 

環境アセスメントへ向けて

私たちは、このように生物多様性に富んだいろいろな自然環境が生まれている夢洲が、この先の未来も野鳥たちをはじめとする生きものたちの、大阪湾の大事な拠点となっていてほしい、と心から願っています。
2021年8月12日、私たちは国際博覧会協会の環境影響評価準備書の公開(同年10月1日)に先だちまして、「大阪・関西万博」 私たちからの環境影響評価準備書(生物多様性編)【要約】を発表いたしました。ぜひご覧ください。また、表・夢洲の重要種と開発による影響に掲載した野鳥・植物の写真を掲載していますので、下記リンクよりご覧ください。

2025関西万博・私たちからの環境影響評価準備書

最後に、私たちが調査の間、調査記録のために内部でネーミングした愛称地図を掲載いたします。

大阪市より、万博アセスの準備書については10月1日から縦覧が開始されました。2021年10月1日現在、まだ当協会では内容を精査しておりませんが、私たちの調査のページをご覧になって、「生きものたちのためにできるだけ自然環境を残しておいた方がよい」、と思われる方は、ぜひ環境影響評価準備書へのご意見をお送りくださいますよう、ご協力よろしくお願いいたします。

   大阪市に意見を送りましょう!  大阪市 2025年日本国際博覧会 環境影響評価準備書

 

→ 環境アセスメントで注目すべき野鳥  →夢洲の在来植物

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