夢洲の12か月
夢洲は、工事の進捗によって、いろいろな生態系が生まれては消えていきます。
土砂埋め立てを終え砂利を敷いて砂礫地になると、そこはコアジサシやシロチドリ・コチドリが繁殖しようとやってきます。
雨が続くと陥没したエリアに池が出現し、たくさんのカモたちがやってきます。
その池にはオタマジャクシが大繁殖し、なぜか突然たくさんのミシシッピアカミミガメが泳いでいたりします。
野原だった場所は季節が変わるとあっという間に草原になり、ヒバリが巣材を運び、セッカが警戒しています。
湿地にはヨシが進出し、夏には気持ちの良い風が渡り、カエルの大合唱をバックに、トンボや若ツバメが飛び交います。
私たちが夢洲をみてきた期間はわずか2,3年ですが、どれだけ大阪湾の自然の復活力が力強いものか、そしてそこに生きようとする命のなんとたくましいことか、人間の想定を超えるそのエネルギーに感動すら覚えました。
私たちが目にしたそれらのシーンを少しでもお伝えしたいと思い、ここに写真を掲載します。
写真はすべて、大阪自然環境保全協会の夢洲生きもの調査で撮影されたものです。(順不同)
1月
2019年1月29日 3区の雨水池にホシハジロが5000羽ほど、ゆったり休んでいました。毎年埋め立てが進み、池が小さくなっていくので過密状態です。
2月
不動の常連さんヘラサギを囲むように、いろいろな種類のカモが自由に動き回っています。
3月
ハシビロガモが何十羽も集まり、頭を水中につっこみ、ぐるぐる回っている。水流を起こし、水底のプランクトンを巻き上げて捕食する行動だそうです。池が広い間は、こういう輪が10も20もあちこちにできていました。
4月
長旅の訓練をしているのでしょうか。ハマシギが200羽300羽の群れを作って、湿地の上を旋回する光景は圧巻です。
シギ・チドリは湿地ではまるで保護色。湿地や砂礫地に溶け込むような色彩、しかも小さくて、すばしっこく動き回るので、とても数を数えられません。
5月
今年もコアジサシがやってきました!コアジサシは高度を上げると空に吸い込まれるように見えなくなります。夢洲は建物がないので見晴らしはききますが、遠くのコアジサシは双眼鏡をつかっても確認できません。
6月
池には大阪で絶滅したと思われていた水草カワツルモが、花を咲かせ、白い花粉を出しています。
7月
ヨシ原を渡る風が気持ちよい夏、若いツバメたちがたくさん集まって飛び回っています。夜は夢洲に入場できないので確認していませんが、おそらく集団ねぐらをつくっているのでしょう。これだけのヨシ原は少なくなっているので、ツバメだけでなく小鳥たちのねぐらとしても大変貴重な環境と言えます。
7月初旬、2区の湿地に3000羽を超えるコアジサシが休んでいました。そして時折、群れになって飛び上がり、湿地の上を旋回します。おそらく渡りの前の大集合なのでしょう。夢洲で今年生まれた幼鳥もこの中に混ざって、その後すぐ旅立ちました。
コアジサシが旅立った後、セイタカシギの幼鳥が飛ぶ練習をし始めました。複数家族います。難しい繁殖が夢洲で何例も成功しているのです!実はこの下の写真の中に、生まれて間もないヒナが4羽写っているのですが、わかりますか?
8月
夢洲にはカワウも多くいます。夢洲はカワウのねぐら調査のポイントとなっていますが、鉄柵に並んでいるときは鉄柵の一部と化していてカワウに気づかないことも多く、突然動き出すと、びっくりします。5000羽を超えるのではないかと思われる大群が、夢洲の南側の海につっこんで捕食しているシーンも目にしました。
9月
サギ類で一番多いのはアオサギでしょうか。いつもは1羽ずつで行動しているのですが、時折大集合しているときがあります。
10月
雨でできた池の周りに、猛禽のミサゴが50羽もこのように集合しています。杭と言う杭の上には必ずいますが、杭が足らず、砂礫地の上に座っている個体もいます。海でボラをとらえたミサゴが、杭の上で食べている光景をよく見かけます。
11月
塩性湿地に、在来植物のウラギクが満開となっていました。台風前には特定外来生物のナルトサワギクが満開だった場所です。台風で潮をかぶり枯れてしまったあとに、再び育ってきました。
12月
ひときわ大きく美しいツクシガモが一斉に飛び立ちました。何事かと思ったら、オオタカが上空を旋回し、この塩性湿地に降り立ちました。