「大阪湾岸に生物多様性ゆたかな」共同宣言
「大阪湾岸に生物多様性豊かな・・・」共同宣言について
11月16日、大阪自然史フェスティバル2024でのシンポジウムにて、発表させていただきました共同宣言は、シンポジウム後、関係諸団体と、文章の精査を繰り返し、やっと形が整いました。
これで、賛同団体を募ったうえで、1月に正式発表を考えております。
下記に全文表示いたしました。(または→PDFダウンロード)
大筋は変わりませんが、形がだいぶ変わりましたので、すでに賛同してくださっている団体・個人の皆様は、ご確認いただき、よろしければ、そのままでお願いいたします。(取り下げる場合はご連絡ください。)
★賛同団体として団体名を公開・宣言文に記載していただける団体の代表の方は、office@nature.or.jp または yumesima@nature.or.jp までご一報ください。
★賛同していただける個人の方は、宣言文の下に設置してある記名フォームに、ご記入・送信よろしくおねがいいたします。
「大阪湾岸に生物多様性豊かな干潟や湿地を取り戻すための共同宣言」
私たち環境保護団体は、陸域と海域をつなぐ沿岸部で、
生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せるというネイチャーポジティブの実現のために
1.残す: 大阪湾岸に現存する自然環境は保護エリアとし、その維持保全に努め、未来に伝える
2.創る: すでに開発し劣化した湾岸部においては、遊休地や低利用地などを自然回復の候補地に選定し、早期に自然海浜・干潟や湿地環境を戻す造成に着手する
3.広げる : 海岸や海上の埋め立てを伴う事業ついては、生物多様性の回復を第一優先課題として、開発面積と同等以上の湿地や干潟の造成を行う
ことを、関係機関に働きかけるとともに、
あらゆる機会に、ネイチャーポジティブの理念を広げ、行政・企業・NGO・民間団体などの組織や市民とともに、連携・協力の場を広げ、知恵を出し合って、大阪湾岸に生物多様性豊かな干潟や湿地をとり戻していくことを、宣言します。
【趣旨説明】
1)ネイチャーポジティブとは
「自然と共生する社会」の達成に向けた2030年ミッションとして掲げられているネイチャーポジティブとは、自然を保護するだけでなく、社会・経済全体が生物多様性の保全に貢献するよう変革させ、自然を回復軌道に乗せていく考え方です(「生物多様性国家戦略2023-2030」)。
また、「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」(2022年12月)では、ネイチャーポジティブ実現のための一つとして、2030年までに、陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする「30by30目標」を掲げています。わが国では国立公園や自然共生サイト制度を活用し、保護地域拡充に向けて努力しています
大阪府域の現状の保護エリア(条例等に基づく地域指定の実面積)の割合は、陸域で府域面積の約24.6 %です。しかし湾岸部においては、現在大阪府の海岸線全長の1%程度しか自然海岸がなく、生物多様性の損失を食い止め回復させるためには、相当思い切った取り組みが必須となります。
2)沿岸生態系を保全する意義
沿岸域の自然生態系を指標するシギ・チドリ類は、世界的に減少が指摘されており、日本に渡来する個体数も激減しています。その大きな要因の一つは生息地である干潟や湿地の消失と考えられます。渡りをする水鳥たちは、その生息環境を開発で奪われ、埋め立て途上の水辺などを代替地として命をつないできましたが、その環境は不安定です。
大阪湾岸は「東アジア・オーストラリア・フライウェイ」の重要な中継地です。渡り鳥の生息地の保全は、国際的にも大きな渡りのルートを維持し、アジア地域の生物多様性保全にもつながります。
また、シギ・チドリ類を守ることは、その渡来地である湿地や干潟などの自然環境を守ることであり、それは生物多様性に富んだ地域の財産を守ることでもあります。海岸線の自然は風の道をつくり、ヒートアイランド化を軽減し、自然との触れ合いや環境教育の場としての役割も担い、人間にとっても貴重な場所を守ることにつながります。
3)大阪湾岸のもつポテンシャル
大阪湾は古くから「魚庭(なにわ)の海」と呼ばれたほど生物多様性に富み、私たちはその恩恵を受けてきました。そして、瀬戸内海の東端に位置する大阪湾は、長年シギやチドリなどの水鳥の渡りの中継地や越冬地となっていました。
「南港野鳥園」は、50年以上前、埋め立て中の湿地に多くのシギ・チドリ類が渡来していたことから、その場所を守ってほしいと願う市民が立ち上がって作られました。この野鳥園は渡り鳥のために作られた人工干潟として、全国的にも先駆的な事例のひとつとなっており、近接する夢洲とともに大阪府の「生物多様性ホットスポットAランク」に選定されています。
4)現在の危機的状況
2025年大阪・関西万博の開催地である夢洲は、20年以上にわたり、コアジサシやシギ・チドリ類など渡り鳥の大阪湾最大の渡来地となっていました。万博建設工事中の2023年5月から2024年9月にも、残されたわずかな湿地で、レッドデータブックに記載の鳥類51種を含む71種の鳥類が確認されています。しかしこの場所は、万博で「つながりの海」として利用された後、万博閉会後には大阪市によって完全に埋め立てられる計画です。
大規模な渡りのルートである大阪湾での渡来地の消失は、日本を通過するシギ・チドリ類の絶滅を加速させます。「いのち輝く未来社会」を目指しているはずの地元・大阪では、生物多様性の保全や維持についての配慮は全く図られないまま、渡り鳥たちはまた一つ貴重な生息地を失おうとしています。それは、私たちが生物多様性ホットスポットという貴重な財産を失うことも意味しており、これは、ネイチャーポジティブの理念に完全に逆行しています。
以上
2025年1月15日(予定)
公益社団法人 大阪自然環境保全協会
日本野鳥の会大阪支部
公益財団法人 日本野鳥の会
認定NPO法人 バードリサーチ(予定)
公益財団法人 世界自然保護基金(WWF)ジャパン(予定)
公益財団法人 日本自然保護協会(予定) (順不同)
賛同していただける方へ
共同声明文をお読みいただき、賛同していただける方は、以下の記入フォームに記入し送信してください。
(おひとり一回になっております)
※団体でのエントリーも可能です。
賛同します → 記入フォームへ
以下、シンポジウムで発表した「案」です。
かつての大阪湾奥部には広大な干潟・ヨシ原が存在し、堺から泉北の海岸には白砂青松の浜辺が連なり、その海は多くの生きものを育み、私たちはその恩恵を受けてきました。そして、瀬戸内海の東端に位置する大阪湾は、古くからシギやチドリなどの水鳥の渡りの中継地や越冬地となっていました。
シギ・チドリ類は、長距離の渡りをするものが多く、世界的に減少が指摘されており、日本に渡来する個体数も激減しています。その大きな要因は生息地である干潟や湿地の消失と考えられます。渡りをする水鳥たちは、その生息環境を湾岸部の開発で奪われ、埋め立て途上の水辺などを代替地として命をつないできましたが、その環境は不安定です。大規模な渡りのルートである大阪湾での渡来地の消失は、日本を通過する鳥たちの絶滅を加速させます。
大阪市住之江区にある「南港野鳥園」は、50年以上前、埋め立て中の湿地に多くのシギ・チドリ類が渡来していたことから、その場所を守ってほしいと願う市民が立ち上がって作られました。この野鳥園は、面積は大きくないものの渡り鳥のために作られた人工干潟として、全国的にも先駆的な事例のひとつとなっています。
現在、大阪府レッドリスト2014で「生物多様性ホットスポットAランク」に南港野鳥園とともに指定されている夢洲に造成中にできた湿地が、20年以上にわたりシギ・チドリなどの大阪湾最大の渡来地となっていました。夢洲では大阪関西万博に向けての地盤改良などの工事が進む中、2023年5月から2024年9月の間に、わずかに残された沈殿池周辺で、51種ものレッドデータブック記載鳥類を含む71種の鳥類が確認されています。この湿地についても生物多様性の保全や維持についての配慮が全く図られないままに万博では「つながりの海」として利用され、万博閉会後には大阪市により完全に埋め立てられる計画となっています。渡り鳥たちはまた一つ貴重な生息地を失おうとしています。
シギ・チドリ類を守ることは、その渡来地である湿地や干潟などの自然環境を守ることであり、それは生物多様性に富んだ地域の財産を守ることでもあります。自然の海辺は風の道をつくり、ヒートアイランド化を軽減し、海辺の自然と触れ合うことや環境教育の場としての役割も担う、人間にとっても貴重な場所を守ることにつながります。
「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」(2022年?月)では、2030年までに、陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする「30by30」の目標とともに劣化した自然の30%を回復させる目標を掲げています。シギ・チドリ類を守る視点で大阪湾再生を考えることは、国際的にも急務であるといえます。渡り鳥の生息地の保全は、アジア地域の生物多様性保全にもつながります。
わが国では「生物多様性国家戦略 2023-2030」を閣議決定(令和5年3月31日)していますが、その取り組みは他の先進国に比べ大きく遅れています。
大阪府域の現状の保護エリア(条例等に基づく地域指定の実面積)の割合は府域面積の約24.6%、海域の指定は自然海浜保全地区のわずか22ヘクタールしかなく(大阪府生物多様性地域戦略に係る参考資料より)、30by30の目標年の2030年までに保護エリアを30%とし、生物多様性の損失を反転させるためには、予算の確保を含め相当思い切った取り組みが必須です。 また2050年までに生物多様性の損失を完全回復させるためには、保全の強化をさらに進める必要があります。
よって、私たち環境保護団体は、陸域と海域をつなぐ湾岸部でのネイチャーポジティブの具現化のために
1.残す : 大阪湾岸に現存する自然環境は、保護エリアとし、その維持保全に努め、未来に伝える
2 創る : すでに開発し劣化した湾岸部においては遊休地や低利用地などを、
ネイチャーポジティブ候補地に選定し、早期に干潟や湿地の造成に着手する
3 広げる : 海岸や海上の埋め立てを伴う事業(港湾事業やフェニックス事業等)につ いては、
ネイチャーポジティブによる生物多様性の回復を第一優 先課題として、
開発面積同等以上の湿地や干潟の造成を行う
以上を、行政、企業、環境保護団体、民間団体などあらゆる組織や市民とともに
取り組んでいくことを宣言する。
2024年11月16日(土) 大阪市立自然史博物館講堂にて
共同宣言予定団体
公益社団法人 大阪自然環境保全協会
日本野鳥の会大阪支部
公益財団法人 日本野鳥の会
公益財団法人 日本自然保護協会
認定NPO法人 バードリサーチ
WWFジャパン (五十音順)