生物多様性国家戦略の改定(案)に対する意見 (理事 岡秀郎)
〈提出先〉
環境省 自然環境局 自然環境計画課 生物多様性地球戦略企画室
提出年月日:2012年8月5日
生物多様性国家戦略の改定(案)に対する意見
公益社団法人大阪自然環境保全協会 理事 岡 秀郎
(1)該当箇所
生物多様性国家戦略の全般に関わる法制度について。(第2章5節・6節、p44~53)
(2)意見の要約(94字)
改定案では、危機的状況にある生物多様性の保護保全政策・施策の根幹をなすべき法制度改革が無いに等しいため、生物多様性基本法を上位とした法制度体系の改革について記載し、実施していくべきです。
(3)意見及び理由
(前文省略)法制度体系の改革を避けて策定されたこれまでのような「戦略」では、日本の生物多様性は保護保全できず、現実的には実効が上がらず、「戦略」は残っても、自然・生物多様性はさらに台無しになっていた、という結果になります、いや、その結果が-すでに現況-と言えます。
つまり、今回の改定案も含めた「戦略」は、根幹的な課題、すなわち第一義的で最も実効的な法制度体系の旧態不備・制度疲労に対応できておらず、それら最も重要で喫緊の課題を避けて策定されており、<戦略>には成りえていません。
今回の改定案で、こうした問題に対応することは最重要で必須ですので、環境省・関係省庁の責務として、是非宜しくお願い致します。
関係省庁・政府がご承知なのは当然ながら、日本の国土に関する法制度は、国土利用計画法や国土形成計画法などを中心として、開発・利用を主たる目的とした体系をもち、自然環境保護保全関係の法制度は、それらに従属的に策定されてきました。ここにようやく生物多様性基本法が施行されましたが、上位法とは言ってもまだまだ理念法であり、
自然豊かだったはずの国土は、国土利用計画法などを軸として改変が進行していくばかりです。つまり、今のままの同基本法や関係法制度体系では生物多様性の危機の第1要因を有効的に抑制し昇華していくことはできません。そこで、「戦略」を本当の<戦略>とするため、改定案には次の内容を盛り込んでいただきますよう宜しくお願い致します。
1)自然・農耕林地を含めた国土の保全・利用に関する法制度体系を、自然生態系(広がり等としての)・生物多様性の保護保全を上位とする視点から改善(改革)していく。
2)生物多様性基本法を上位法として義務法化しつつ、国土利用計画法などによる現行の開発改変を抑制できるよう誘導する。場合によっては、国土法などの要素を同基本法に統合する。
3)土地所有権の公的移転や、いわゆるゾーニングを誘導する法制度を強化する。
4)上記のための代替政策・施策も同時に立案し(新規産業化など)、また財源措置を確保する。
5)上記を3年以内で、第1次法制度改革として実施していくことを記載する。
以上