タンポポ2005・参考資料

タンポポ調査・西日本2010
参考資料

(タンポポ調査・近畿2005の時に作成した資料です)




目 次
1.これがタンポポだ!(似た種類との識別法)クリック
2.タンポポの種類分け(在来種と外来種の見分け方)クリック
3.雑種タンポポについてクリック
4.1970年代と予備調査(2004年)の調査結果クリック


1.これがタンポポだ!(似た種類との識別法)

 春に黄色い花が咲く植物で、タンポポとよく似た植物が何種類かある。下の図をよく見て、もう一度確認してみよう (重要な特徴は赤字で示した)。








******* 注意! タンポポと間違いやすい植物 *******




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2.タンポポの種類分け(在来種と外来種の見分け方)
 古くから日本にある在来種と、ヨーロッパ原産の外来種(帰化種)とは、どこで見分けられるのだろうか? 花弁の下にある緑色をした総苞の外片に注目すれば簡単にわかります。

 近畿地方に分布する在来種のタンポポは詳しく調べると数種類(後の資料参照)に分けられますが、今回の調査では花弁の色に注目して、大きく2種類に分けて調査します。また、外来種は2種類ありますが、タネ(痩果)がないと区別がむつかしいので、タネがない場合は外来種としてまとめ、タネがある場合にのみ2種類に分けて報告してください。


*近畿地方に分布するタンポポ類の簡単な見分け方*


<在来種と外来種の見分け方>

・基本的には上図のように、総苞外片の形から区別できる。
 在来種では総苞外片が上向きで内片に完全に圧着しているものが多いが、中には少し離れているものもある。はっきりしないものは、調査委員会で標本をもとに確認する。
 一方、外来種も、典型的なものは、総苞外片が大きく反り返って完全に下向きになっているが、やや下向きのもの・ほぼ水平に広がっているもの・上向きのものなどもある。
 これらについても、開花中の花で総苞外片の状態を観察して5段階に分けて記録していただき、後日調査委員会で標本をもとに確認作業を行うことにしている。



<在来種について>
 日本産のタンポポは、北村(1957)によって21種類に分類され、この分類が多くの図鑑などでも採用されてきた。
 このうち、近畿地方にはカンサイタンポポ・トウカイタンポポ・セイタカタンポポ・クシバタンポポ・ケンサキタンポポ・ヤマザトタンポポ・シロバナタンポポなどが分布することが知られている。
 その後、様々な検討が加えられ、森田(1995)は15種類に整理することを提唱している。その結果、図鑑などの記述も、どちらの分類に基づくかによって異なり、わかりにくい状況となっている。
 今回の近畿全体のタンポポ調査用紙では、在来種のタンポポを白い花を咲かせるシロバナタンポポ類と、黄色い花を咲かせるものの2つに大別するにとどめ、さらに細かい分類については各府県の調査実行委員会の判断で行うことにした。この際、黄花の在来種を分布上大きな違いがある2倍体(カンサイタンポポなど)と高次倍数体(ヤマザトタンポポ・キビシロタンポポなど)とに区分することにした。
 これは、今回のタンポポ調査では、頭花を送っていただき、その花粉の観察を行っているので、花粉のサイズが均一な2倍体と、均一でない3倍体以上の高次倍数体とを区別することが可能であるためである。
 これ以外にも、今回の調査では、頭花を送っていただいているので、これをもとに大多数は同定が可能であるが、2種類の中間型が見られるものもあり、頭花のサンプルだけでは、区別することができないものも多い。

<外来種 (雑種を含む) について>
 今回の調査では、原則として外来種をセイヨウタンポポとアカミタンポポの2種類に分けて調査する。
 両者とも総苞外片が内片と離れて垂れ下がっているので、花があれば在来種とは区別できるが、セイヨウタンポポかアカミタンポポかを識別するためには、綿毛のついた果実(痩果)が必要であり、花しかない場合は、外来種としてまとめて扱わざるをえないことになる。
 セイヨウタンポポの果実は茶褐色 (ミルクコーヒーの色に近い) であるが、アカミタンポポは赤褐色 (赤レンガ色といった方がいい、中には少し赤っぽいだけのものもある) である。
 一般に、アカミタンポポはセイヨウタンポポに比べて花の咲く時期が遅いので、外来種があって果実ができていない場合は、1〜2週間後にもう一度調査に行くとよい。

 ここでいう外来種には雑種も含まれており、正確に言えば「在来種との雑種を含むセイヨウタンポポ」と「在来種との雑種を含むアカミタンポポ」を区別することになる。
 また、今回の調査では、総苞外片が上向き (段階の1や2) であっても、花粉のサイズがバラバラだった場合は、在来種ではなく雑種か外来種なので、これらも外来種 (雑種を含む) に分類することになる。


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3.雑種タンポポについて

 近年増加している在来種と外来種との雑種タンポポには、下表に示した3つのタイプがあることが知られているが、いずれも、総苞外片の形から見ると外来種と区別することはできず、雑種と外来種とをはっきり識別するためには、DNAやアロザイムなどの化学成分を分析する必要がある。そこで、今回の調査では雑種タンポポは外来種に含めて報告していただくこととし、送っていただいた頭花をもとに調査委員会で検討することにした。
 もちろん、すべてのサンプルを解析することは時間的にも、予算的にも不可能なので、各府県のサンプルから一定数を抽出して分析することになる。その結果から可能であれば、雑種タンポポの頭花・痩果・花粉などの特徴を見出したいと考えている。

 他府県でのDNA解析やアロザイム解析を行った報告や、昨春実施した大阪府での予備調査によると、総苞外片が完全に下向きのものには純粋な外来種が多く、雑種の総苞外片は様々な状態になることがわかっている。そこで今回の調査では、総苞外片の状態を5つのタイプに分けて報告していただくことにし、別に総苞外片の状態と雑種との関係(それぞれのタイプのうち、何%が雑種であるか)を調べて、近畿地方における雑種の広がりについても把握したいと考えている。
 予備調査の結果から、それぞれのタイプ別の雑種の比率が算出できるが、このときは、大阪市内の結果と、吹田市・堺市での結果に差があり、現在解析を行っている近畿の他府県での結果も含めて今後検討を加える必要がある。

 雑種タンポポについて詳しく知りたい方は、2003年4月に本調査委員会が日本の代表的なタンポポ研究者3名を講師に招いて行った「タンポポ調査の意義を考える」研究集会の報告(関西自然保護機構会誌24巻1号,2004年)をご覧いただきたい。
 なお、その概要はタンポポ調査委員会・活動記録 No.3 にも掲載している。

在来種・3つのタイプの雑種・外来種の判別(森田ほかによる)
  染色体数 核の染色体の起源葉緑体DNADNA含量のピーク
2倍体在来種16本(2X)JJ(16本) J(在来種)1.7〜2.2
3倍体雑種24本(3X)J(8本)+EE(16) J(在来種)2.3〜2.7
4倍体雑種32本(4X)J(8)+EEE(24) J(在来種)2.8〜3.4
雄核単為生殖雑種24本(3X)EEE(24本) J(在来種)1.8〜2.2
純粋な外来種24本(3X)EEE(24本) E(外来種)1.8〜2.2


外来種と雑種の構成比率(各地の測定値の比較)
タイプ \ 地域
東京
(芝池・森田,2002)
新潟
(芝池・森田,2002)
全国
(芝池・山野,2003)
大阪市
(伊東他,2004)
吹田・堺市
(伊東他,2004)
測定サンプル数372個体231個体 844個体解析中解析中
3倍体雑種57%9% 21%  
4倍体雑種25%49% 55%  
雄核単為生殖雑種6%22% 9%  
純粋な外来種12%20% 15%  


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4.1970年代と予備調査(2004年)の調査結果
(タンポポ調査・近畿2020の最終調査結果はここをクリックしてご覧下さい。)
 近畿地方でも1970年代半ばから各地でタンポポ調査が行われ、それらの記録が残されている。
 下図左は堀田満「近畿地方におけるタンポポ類の分布」(自然誌研究12号(1977))の地図に、奈良生物教育会・和歌山大学自然保護の会他のデータを追加して作成したもので、1970年代後半の近畿地方における貴重な調査結果である。
 一方、下図右は昨春の近畿地方における予備調査の結果で、左と同じ地域範囲を同じ凡例で示している。 両者を比較すると、この30年間の近畿地方でのタンポポの分布状況は著しく変化したことがわかる。


 ところで、2004年の予備調査では合計7753地点のデータが得られた。右図はこれらのデータを3次メッシュ4つ分ごとに集計して外来種の占める割合を示したものである。
 この分布地図を見ると、まだまだ未調査のメッシュが多く残されていることがよくわかるが、今春の本調査ではこれらの調査漏れの地域でも調査を行い、近畿全域でのタンポポの分布状況を明らかにしたい。



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