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身近に見られるタンポポには在来種と外来種、そして最近ではその雑種があることが知られています。タンポポ調査とは、身近な地域でタンポポを探して歩き回り、どのようなタンポポが分布しているのか調べて記録し、在来種と外来種の分布状況の情報を集めて、地域ごとに自然環境に対する人為の加わり各方の強さを知ろうというものです。在来種のタンポポは草刈りや踏みつけなどの恒常的で緩やかに人間の力が加わっている場所に多く、近年になって、開発によって大きく改変された土地には外来種のタンポポが侵入して分布を拡大してきました。このような両種の生育環境の違いに注目して、どちらのタンポポがあるか、あるいはどちらが多いかを調べることで、その場所の環境が人間によってどの程度改変されているかを知ることができるのです。
タンポポ調査を2010年に近畿・四国・中国地方で行う目的は次のようにまとめられます。
第一には、タンポポの種類ごとの分布を記録することです。私たちの周りにどんなタンポポがあるのか記録しておくことは、環境以外にもさまざまな情報をもたらしてくれます。たとえば、タンポポのいくつかの種は絶滅危惧種としてレッドデータブックに掲載されていますが、細かい分布データが無い場合もあります。タンポポの今を記録し、後世に伝えることは大切なことだと私たちは考えています。
第二には、タンポポの調査をカンサイタンポポの分布域である西日本で行うことで、その地域全域の自然環境の現状を把握することです。特に1970年代にも調査が行われている地域では過去との比較が可能です。そして過去のデータがない地域でも、他の府県の結果と相互に比較をすることで、地域ごとの自然の特性や、自然環境の変化について考える資料を得ることができます。
第三には、2005年の近畿地方の調査でも、雑種タンポポがかなり広範囲に分布を拡大していることがわかりました。西日本全域でのこれだけ密度の高い調査は今回が初めてであり、現時点での雑種タンポポの分布状況と外来種との関係を把握しておくことは重要です。
第四には、より多くの人々とともに調査を行うことで、各自が身近な自然に目を向け、自然環境の変化に関心を持つことにつながるとともに、このような大規模な調査が行われることが広く知られることで、より多くの人々が身近な自然に関心を持つようになることを期待しています。また、小中学校や高等学校における環境教育の一環として「タンポポ調査」を呼びかけ、身近な地域の自然環境に興味を持つ児童生徒を育てることにつなげていきたいと考えています。
第五には、だれもが参加しやすい調査を共同で行い、地域の自然環境について考えることで、自然保護団体・博物館・自然愛好団体・植物研究者など参加者間で交流を図るとともに、各地域での自然保護・環境保全の課題を共有することができると考えています。