第9回講座 水田を見る  (2010.6.12.)
講座内容  水田の農業生産の現状と水田のもつ自然環境への多面的な機能について考える
講  師   松下美郎 先生 大阪府環境農林水産総合研究所 企画課長
場  所   能勢町平野の水田



自然環境の講座で、何故「水田」が採り上げられているのか?水田だけでなくその周りの水道、ため池、人家等を含めて、都会で失われた色々な自然環境を、自分の目で見て、考えて欲しいと挨拶される松下先生。


水田に関する理解を深めるために、クイズ形式による設問(10問)が行われた。耕作放棄地が、10%と思う人は?


耕作放棄地は、統計上は5〜6%、大阪府内では10%あるそうです。
なぜ問題なのかは、現地を見ながら考えましょうと、各設問毎に 松下先生から具体的に解説を頂く。


水田は、人為が活発に及ぶ人里にあるので、その周辺には外来生物(アメリカザリガニ、カダヤシ、スクミリンコガイ等)が多く見られる。
人里で植物調査をするときには、帰化植物図鑑の必携が大切で、「日本帰化植物写真図鑑」の紹介を頂く。


1ヶ月前に田植え機で、間隔30cm、列幅12cmで種植えされた水田を見る受講生。昨年の同時期には見られなかった黄色の花は、特定外来生物のオオキキンケイギク。
(注)特定外来生物とは、侵略性が強く、生態系に悪い影響を及ぼす生物で、飼育・栽培・他の場所への運搬が禁止されている。


畦の斜面の高さは、約3〜4m。ヒメジヨン、セイタカアワダチソウ等外来種の帰化率は、80〜90%で、イネ害虫の発生増大を防ぐためにも草刈は重要であるが、機械化ができず手間のかかる作業となっている。


外来種のシナダレスズメガヤは、河川に流れて河原に定着し、上流からの水を止めてしまうといった大きな害を与えている。人のやることが思わぬ影響を及ぼしている。


標高130mの道の駅「くりの郷」から、水田を見ながら標高330mの最上部に辿り着く。素晴らしい能勢の風景が見られた。このような景観や生物環境を維持するには、私達を含めて次世代の課題でもある。


同行頂いた地主の堀口さんから、棚田の歴史・維持管理・環境を含めた苦労話しをお聞きする。
山際の田んぼ(右側の筋は、水が出る)の米は、下に比べて美味しいとのこと。将来的には、ユリ、キンラン、シュンラン等を増やしていきたいとのことでした。


澄んだ池には、水が絶えず流入していた。大きなオタマジャクシ、イモリや周辺で飛び交うトンボ等の生き物に見入る受講生。
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